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相続セミナー第3回:誰が相続人になる? 基本編 ~配偶者・子・親・兄弟姉妹の法定相続順位~

ポッドキャストでお聞きになるにはこちらから↓

https://creators.spotify.com/pod/show/r0072/episodes/3-e3307t7

 

「親に万が一のことがあったら、財産は誰が引き継ぐことになるんだろう?」「うちは兄弟が多いけど、みんな相続人になるのかな?」「自分は相続できる立場なのだろうか?」

大切な方が亡くなられた後、悲しみに暮れる間もなく直面するのが相続の問題です。前回までの記事では、相続がいつ始まり、どのような手続きが開始されるのかという概要をお伝えしました。今回は、相続手続きを進める上で最も基本となる「誰が相続人になるのか」という点について、法律で定められたルール(法定相続)の基本編を詳しく解説していきます。

特に40代、50代の皆様にとっては、ご両親の相続が現実味を帯びてくる年代であり、ご自身の家族構成も踏まえて、この基本的なルールを知っておくことは非常に重要です。

この記事を読めば、遺言書がない場合に誰が相続する権利を持つのか、その優先順位はどうなっているのか、といった法定相続人の基本がスッキリと理解できるはずです。そして、この相続人確定のプロセスにおいて、行政書士がどのように皆様をサポートできるのかもご紹介します。

法定相続人とは?~法律が定める相続の担い手~

まず、「法定相続人」という言葉の意味から確認しましょう。

法定相続人とは、亡くなった方(被相続人といいます)の財産を相続する権利が法律によって定められている人々のことを指します。

被相続人が生前に有効な遺言書を残していれば、原則としてその遺言書の内容に従って財産が分けられます。しかし、遺言書がない場合や、遺言書があっても全ての財産について分け方が指定されていない場合には、この法律のルールに基づいて相続人が決まり、財産が分配されることになるのです。

また、遺言書がある場合でも、法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分を主張できる権利が保障されている場合があるため、誰が法定相続人にあたるのかを把握しておくことは、どのようなケースにおいても相続の基本となります。

常に相続人となる「配偶者相続人」

法定相続人の中で、特別な立場にあるのが**被相続人の配偶者(夫または妻)**です。

  • 配偶者は常に相続人となります。
  • これは、他の相続人(例えば、子や親、兄弟姉妹)がいるかどうかに関わらず、常に適用される原則です。
  • ただし、法律上の婚姻関係にある配偶者に限られます。長年連れ添った事実婚(内縁関係)のパートナーには、残念ながら現在の日本の法律では相続権は認められていません(ただし、遺言によって財産を遺贈することは可能です)。

例えば、亡くなった方に子がいれば、配偶者と子が相続人になります。子がおらず、亡くなった方の両親が健在であれば、配偶者と両親が相続人となります。

順番が決まっている「血族相続人」

配偶者以外の法定相続人は「血族相続人」と呼ばれ、相続できる順位が法律で明確に定められています。先の順位の人が一人でもいれば、後の順位の人は相続人になることができません。

この順位をしっかりと理解することが、法定相続を把握する上で非常に重要です。

【血族相続人の順位】

  1. 第1順位:子 (子が亡くなっている場合は孫などの直系卑属)
  2. 第2順位:直系尊属 (父母、祖父母など)
  3. 第3順位:兄弟姉妹 (兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)

それでは、各順位について詳しく見ていきましょう。

第1順位:子(およびその代襲相続人)

  • 被相続人に子がいる場合、その子が第1順位の相続人となります。
  • 実子はもちろん、養子縁組をした子(普通養子・特別養子)、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子で父親から認知された子も、実子と同じように相続権を持ちます。
  • 子が複数いる場合は、相続分は原則として均等になります(具体的な相続割合については、今後の記事で詳しく解説します)。
  • 胎児の権利: 相続開始時にまだ生まれていない胎児も、無事に生まれれば相続権が認められます。
  • 子が既に亡くなっている場合(代襲相続): もし、被相続人より先に子が亡くなっていた場合で、その亡くなった子にさらに子(被相続人から見て孫)がいれば、その孫が亡くなった子に代わって相続人となります。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。孫も亡くなっていれば曾孫…と続いていきます。代襲相続については、次回の「応用編」で詳しく解説します。

具体例:

亡くなったAさんには、妻Bさんと、子Cさん、子Dさんがいます。

この場合の相続人は、妻Bさん、子Cさん、子Dさんの3人です。

第2順位:直系尊属(父母、祖父母など)

  • 被相続人に第1順位の相続人(子やその代襲相続人である孫など)がいない場合、第2順位である直系尊属が相続人となります。
  • 「直系尊属」とは、父母、祖父母、曽祖父母といった、本人より前の世代の血族のことです。
  • 養父母も実父母と同様に直系尊属として扱われます。
  • 親等の近い人が優先: 父母と祖父母が両方健在な場合は、より親等の近い(世代が近い)父母が相続人となり、祖父母は相続人にはなりません。父母が既に亡くなっている場合に、祖父母が相続人となります。
  • 例えば、父が亡くなっており母が健在であれば、母のみが相続人(配偶者がいれば配偶者と共に)。父母ともに亡くなっていれば、父方の祖父母と母方の祖父母が健在であれば、その全員が相続人となります。

具体例1:

亡くなったEさんには、妻Fさんと、存命の父Gさん、母Hさんがいます。EさんとFさんの間に子はいません。

この場合の相続人は、妻Fさん、父Gさん、母Hさんの3人です。

具体例2:

亡くなったJさんには、妻Kさんがいます。Jさんの子はおらず、両親も既に亡くなっていますが、父方の祖母Lさんが存命です。

この場合の相続人は、妻Kさんと祖母Lさんの2人です。

第3順位:兄弟姉妹(およびその代襲相続人)

  • 被相続人に第1順位の相続人(子や孫など)も、第2順位の相続人(父母や祖父母など)もいない場合に初めて、第3順位である兄弟姉妹が相続人となります。
  • 兄弟姉妹が複数いる場合は、相続分は原則として均等になります。
  • 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(異母兄弟、異父兄弟)も相続人となりますが、その相続分は父母双方を同じくする兄弟姉妹の半分となります(この点も今後の記事で詳述します)。
  • 兄弟姉妹が既に亡くなっている場合(代襲相続): 被相続人より先に兄弟姉妹が亡くなっていた場合で、その亡くなった兄弟姉妹に子(被相続人から見て甥・姪)がいれば、その甥・姪が亡くなった兄弟姉妹に代わって相続人となります。ただし、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りであり、甥・姪が亡くなっていたとしても、その子がさらに代襲すること(再代襲)はありません。この点も次回の「応用編」で詳しく触れます。

具体例:

亡くなったMさんには、妻Nさんがいます。MさんとNさんの間に子はおらず、Mさんの両親・祖父母も既に亡くなっています。Mさんには兄Oさんと妹Pさんがいます。

この場合の相続人は、妻Nさん、兄Oさん、妹Pさんの3人です。

相続順位の重要なポイント整理

ここで、法定相続人の順位に関する重要なポイントを整理しておきましょう。

  1. 配偶者は常に相続人となる。
  2. 血族相続人には順位があり、先の順位の人が一人でもいれば、後の順位の人は相続人になれない。
  • 子(第1順位)がいれば、親(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)は相続人にならない。
  • 子がおらず、親(第2順位)がいれば、兄弟姉妹(第3順位)は相続人にならない。
  1. 同じ順位の相続人が複数いる場合は、原則として均等に相続分を分ける。

これらのルールを理解することで、「自分は相続人になるのだろうか?」という疑問の多くは解消されるはずです。

「誰が相続人か」を確定する実務:戸籍収集の重要性と難しさ

さて、法律上のルールは上記のとおりですが、実際に「誰が相続人なのか」を法的に確定させるためには、非常に重要な作業が必要になります。それが、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本も含む)等を取得し、読み解く作業です。

なぜ出生まで遡る必要があるのでしょうか?

それは、例えば被相続人に離婚歴があり前妻との間に子がいた場合や、認知した子がいた場合など、現在の戸籍を見ただけでは分からない相続人が存在する可能性があるからです。これらの情報は、古い戸籍を丹念に追っていくことで初めて明らかになります。

この戸籍収集と読解の作業は、相続手続きのまさに第一歩であり、最も重要な基礎作業の一つですが、一般の方にとっては非常に時間と手間がかかることが多いのが実情です。

  • 本籍地が遠方にある場合: 戸籍は本籍地の市区町村役場でしか取得できません。郵送での請求も可能ですが、何度もやり取りが必要になることもあります。
  • 転籍を繰り返している場合: 結婚や引っ越しなどで本籍地が変わっていると、それぞれの役所に請求する必要があり、手間が増えます。
  • 古い戸籍の読解: 戦前の戸籍や改製原戸籍は手書きで、旧字体やくずし字で書かれていることが多く、判読が難しい場合があります。
  • 相続関係の複雑さ: 代襲相続が発生していたり、養子縁組が複数あったりすると、誰が最終的な相続人になるのかを正確に把握するのは専門知識がないと困難です。

 広域交付制度の利用

被相続人の戸籍収集は上記のように大変な手間のかかる作業ですが、令和6年4月から始まった広域交付制度という制度が始まりました。広域交付制度を利用すると、最寄りの役所で被相続人の方の出生から死亡までの戸籍をすべて集めて交付してくれます。但し条件があり、この制度を利用できるのは、直系の親族のみで、兄弟姉妹は利用することができません。また、現在のところ私ども行政書士などの所謂士業も代理でこの制度を利用することはできません。ただ、相続人にとって非常に便利でコスパの良い制度ですので、直系の相続人の方のご依頼であれば、ご自身で広域交付制度を利用して収集することをおススメしています。

相続人調査は行政書士にお任せください!

相続人が第3順位の方(兄弟姉妹やその代襲相続者)しかいらっしゃらない場合は、このような複雑で手間のかかる相続人調査は、相続手続きに詳しい専門家に任せるのが賢明です。そして、この戸籍収集とそれに基づく相続人の確定、さらには「相続関係説明図」の作成は、まさに行政書士の得意とする専門分野です。

行政書士は、その職務上の権限(職務上請求といいます)に基づき、ご依頼者様に代わって戸籍謄本等を収集することが認められています。これにより、皆様が役所の窓口を何度も訪れたり、慣れない郵送手続きに時間を費やしたりする手間を大幅に省くことができます。

行政書士にご依頼いただくメリット:

  1. 迅速かつ正確な戸籍収集: 全国どこの役所に対しても、専門知識を活かして効率的に戸籍を収集します。
  2. 戸籍の正確な読解: 難解な古い戸籍も正確に読み解き、隠れた相続人がいないかなどを徹底的に調査します。
  3. 相続関係説明図の作成: 収集した戸籍に基づいて、誰が相続人であるかを法的に明確に示した「相続関係説明図」(家系図のようなもの)を作成します。この書類は、その後の預貯金の解約手続きや不動産の名義変更(相続登記)、相続税の申告など、あらゆる相続手続きの場面で基本書類として必要となります。
  4. 時間的・精神的負担の軽減: 相続人調査という煩雑な作業から解放され、故人を偲ぶ時間や他の重要な手続きに専念できます。
  5. 次のステップへのスムーズな移行: 相続人が確定すれば、遺産分割協議など、次の具体的な相続手続きへとスムーズに進むことができます。

「うちの家族関係は単純だから大丈夫」と思っていても、実際に戸籍を遡ってみると、予期せぬ事実が判明することも少なくありません。正確な相続人調査は、後のトラブルを防ぎ、円満な相続を実現するための大前提です。

まとめ:法定相続人の基本ルールは相続の第一歩

今回は、「誰が相続人になるのか」という法定相続の基本的なルールについて、配偶者相続人と血族相続人の順位を中心に解説しました。

  • 配偶者は常に相続人。
  • 血族相続人は、①子、②直系尊属、③兄弟姉妹の順で相続権を持つ。
  • 先の順位の相続人がいれば、後の順位の人は相続できない。
  • これらの相続人を法的に確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍収集が不可欠。

この基本ルールを理解することは、ご自身が相続に直面した際に、落ち着いて対応するための第一歩となります。

しかし、実際の相続では、今回説明した基本ルールだけでは判断が難しいケースも出てきます。例えば、「亡くなった子どもの代わりに孫が相続するってどういうこと?(代襲相続)」「養子に行った子や、結婚していない相手との間に生まれた子の相続権は?(養子・非嫡出子の相続)」といった、より複雑なケースです。

そこで次回は、この法定相続の「応用編」として、代襲相続や、養子、非嫡出子、相続欠格、相続廃除など、少し踏み込んだ内容について解説していく予定です。

相続人の確定は、すべての相続手続きのスタートラインです。もし、ご自身のケースで「誰が相続人になるのかよく分からない」「戸籍を集めるのが大変そうだ」と感じたら、どうぞお気軽に、相続手続きの専門家である行政書士にご相談ください。私たちは、皆様の不安に寄り添い、円滑な相続手続きを全力でサポートいたします。

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