
相続セミナー【第3部】民事信託(家族信託)の活用~未来への新たな選択肢~
いつも「相続セミナー」ブログをお読みいただき、誠にありがとうございます。
【第1部:相続の基礎を固める】では相続の基本的なルールや手続きの流れを、【第2部:遺言のすべて - 想いを形にする】ではご自身の意思を未来へ繋ぐための遺言書の重要性や作成方法について、それぞれ詳しく解説してまいりました。これらの知識は、皆様が相続という出来事に直面した際に、きっとお役に立つものと信じております。
そして、今回よりいよいよ【第3部:民事信託(家族信託)の活用】がスタートいたします!
「親が高齢になって、財産の管理が心配…」「もし認知症になったら、家の売却や預金の引き出しはどうなるの?」「障がいのある子の将来のために、何かできることはないだろうか…」 近年、このようなお悩みやご相談がますます増えています。そして、こうした課題を解決する一つの有効な手段として、大きな注目を集めているのが「民事信託(みんじしんたく)」、特にその中でも家族間で利用される「家族信託(かぞくしんたく)」という仕組みです。
この【第3部】では、まだ比較的新しい制度であるため「名前は聞いたことがあるけれど、よく分からない」という方も多い家族信託について、その基本的な仕組みから、具体的な活用事例、メリットや注意点まで、分かりやすく丁寧に解説していきます。遺言や成年後見制度とはまた異なる、新しい財産管理・承継の選択肢を一緒に学んでいきましょう。
【第3部】で取り上げる主なテーマ(予告)
【第3部:民事信託(家族信託)の活用】では、皆様が家族信託の全体像を掴み、ご自身の状況に合わせて活用を検討できるよう、以下のテーマを順次、詳しく解説していく予定です。
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新しい財産管理・承継の形「家族信託」とは?~基本的な仕組み~(第21回予定) まずは、「家族信託って何?」という基本的な疑問にお答えします。委託者・受託者・受益者といった登場人物や、財産を「託す」という信託の基本的な考え方、その目的について分かりやすく解説します。
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なぜ今、家族信託が注目されるのか?~超高齢社会の課題解決策~(第22回予定) 家族信託が、なぜこれほどまでに注目を集めるようになったのか。認知症患者の増加や資産凍結リスクといった、現代社会が抱える課題と、それに対する家族信託の可能性について掘り下げます。
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家族信託の登場人物~委託者・受託者・受益者とは?~(第23回予定) 家族信託を理解する上で欠かせないのが、委託者(財産を託す人)、受託者(財産を託される人)、受益者(信託から利益を受ける人)という3つの役割です。それぞれの立場と権利義務について詳しく解説します。
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遺言 vs 成年後見 vs 家族信託~メリット・デメリット徹底比較~(第24回予定) 財産管理や承継の方法として、遺言や成年後見制度もありますが、これらと家族信託は何が違うのでしょうか。それぞれの制度のメリット・デメリットを比較し、どのような場合に家族信託が有効なのかを明らかにします。
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こんなお悩みありませんか? 家族信託の具体的な活用事例①~認知症対策~(第25回予定) 家族信託が最も活用されるケースの一つが認知症対策です。親が認知症になっても、子が柔軟に財産管理や処分を行えるようにするための具体的な信託設計例をご紹介します。
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こんなお悩みありませんか? 家族信託の具体的な活用事例②~障がいのある子の親なき後問題~(第26回予定) 障がいのあるお子さんの将来の生活を守るため、親御さんが亡くなった後も、信頼できる人に財産管理を託し、お子さんのために安定的に財産を使えるようにする信託の活用法を解説します。
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こんなお悩みありませんか? 家族信託の具体的な活用事例③~不動産・自社株の共有回避~(第27回予定) 相続によって不動産や自社株式が細かく共有化されてしまうと、管理や処分が難しくなります。これを避けるために、家族信託を活用して円滑な資産承継や事業承継を実現する方法をご紹介します。
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家族信託の始め方~契約書作成と専門家選びのポイント~(第28回予定) 実際に家族信託を始めたいと考えた場合、どのようなステップで進めるのか。最も重要な信託契約書の作成ポイントや、信頼できる専門家(行政書士など)の選び方について解説します。
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家族信託の注意点とリスク~設計・運用で気をつけること~(第29回予定) 多くのメリットがある家族信託ですが、注意すべき点や潜在的なリスクも存在します。信託設計時や運用開始後に気をつけるべきポイントを整理します。
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家族信託にかかる税金~贈与税、相続税、所得税など~(第30回予定) 家族信託を利用する際には、税金の問題も無視できません。どのような場合に、どのような税金(贈与税、相続税、固定資産税、所得税など)が関わってくるのか、基本的な考え方をご説明します。
これらのテーマを通じて、家族信託という新しい選択肢を、より身近に感じていただければ幸いです。
なぜ今、「家族信託」という選択肢を知る必要があるのか?
従来の相続対策としては、遺言書の作成や生前贈与などが一般的でした。しかし、これらの方法だけでは対応しきれない、現代ならではの課題も増えています。
- 平均寿命の延伸と認知症リスクの増大: 元気なうちに遺言書を作成しても、その後認知症になってしまうと、預貯金の引き出しや不動産の売却といった財産管理・処分行為が困難になる「資産凍結」のリスクがあります。
- 柔軟な財産管理の必要性: 遺言は本人の死亡によって初めて効力が生じるため、生前の財産管理には対応できません。成年後見制度は本人の判断能力が不十分になった後の保護が主眼ですが、財産の積極的な活用や柔軟な組み換えには制限があります。
- 「想い」を長期的に実現したいニーズ: 例えば、「自分が亡くなった後も、配偶者が安心して生活できるようにしたい。そして配偶者も亡くなったら、残った財産は子供たちに」といった、数世代にわたるような財産の承継の希望(受益者連続型信託など)は、遺言だけでは実現が難しい場合があります。
家族信託は、このような課題に対し、
- 生前の元気なうちから対策を始められる。
- 判断能力が低下した後も、信頼できる家族(受託者)が本人の意思に沿った柔軟な財産管理を継続できる。
- 二次相続以降の財産の承継先まで指定できる場合がある。 といった特徴を持ち、新たな解決策として期待されています。
行政書士と家族信託~あなたの想いをオーダーメイドで設計~
家族信託は、非常に自由度が高く、ご家族の状況や希望に合わせてオーダーメイドで設計できるのが魅力です。しかしその反面、法務・税務など専門的な知識が不可欠であり、安易な自己判断で進めると、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。
行政書士は、契約書作成の専門家であり、また、相続や遺言に関する深い知識も有しています。家族信託の組成においては、以下のようなサポートを提供できます。
- 家族信託に関するコンサルティング: まず、ご家族の状況やお悩み、将来へのご希望などを丁寧にヒアリングし、家族信託が本当に最適な解決策なのか、他の制度(遺言、成年後見など)との比較も含めて検討します。
- 信託契約書の設計・作成支援: ご家族の想いを実現するための最適な信託のスキーム(仕組み)を設計し、法的に有効で、かつ将来にわたって機能する信託契約書の作成を支援します。
- 関係者間の調整サポート: 委託者、受託者、受益者となるご家族間の意思疎通や合意形成がスムーズに進むよう、中立的な立場でサポートします。
- 関連専門家との連携: 信託財産に不動産が含まれる場合の登記手続きは司法書士、税務に関する具体的な判断や申告は税理士、といったように、必要に応じて他の専門家と緊密に連携し、トータルでサポートします。
家族信託は、まさに「家族の、家族による、家族のための財産管理」を実現する仕組みです。その設計には、ご家族の絆と、専門家による適切な法的サポートが欠かせません。
【第3部】で、未来への新たな扉を開きましょう!
【第3部:民事信託(家族信託)の活用】では、この新しい財産管理・承継の形である家族信託について、基本的な知識から実践的な活用法まで、分かりやすく解説してまいります。
「うちの家族にも使えるかもしれない」「こんなことができるなら、安心だ」 そう感じていただけるような情報をお届けできるよう努めてまいりますので、ぜひ引き続きお付き合いください。
次回は、いよいよ【第3部】の最初のテーマ、第21回「新しい財産管理・承継の形「家族信託」とは?~基本的な仕組み~」をお届けします。まずは家族信託の全体像を掴むところから始めましょう。
どうぞご期待ください!