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相続セミナー第37回 :預貯金の相続手続き ~金融機関での必要書類と流れ~

みなさん、こんにちは。「相続・遺言・家族信託お役立ちブログ」へお越しいただき、ありがとうございます。このブログでは、相続、遺言、そして民事信託(家族信託)に関する情報を、専門家である行政書士の視点から、分かりやすく、そして実践的な情報をお届けしています。

前回の第36回相続セミナーでは、「限定承認とは?」と題し、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという、相続放棄とは異なるもう一つの選択肢について詳しく解説いたしました。利用件数は少ないものの、特定の状況下では有効な手段となり得ることをご理解いただけたかと存じます。

さて、相続財産の中でも、おそらく最も身近で、ほとんどの相続において手続きが必要となるのが「預貯金」ではないでしょうか。故人が大切に遺してくれた預貯金を、相続人が受け取るためには、金融機関で所定の手続きを行わなければなりません。しかし、「親の口座が凍結されてしまった!」「手続きが複雑で何から手をつけていいか分からない…」といったお悩みを抱える方も少なくありません。

そこで今回の第37回では、「預貯金の相続手続き ~金融機関での必要書類と流れ~」というテーマで、この避けては通れない預貯金の相続について、金融機関での具体的な手続きの流れ、一般的に必要となる書類、そしてスムーズに進めるためのポイントや注意点などを、分かりやすく解説してまいります。

この記事を最後までお読みいただければ、金融機関での預貯金相続手続きの全体像が掴め、安心して手続きに臨むための準備ができるようになるはずです。

なぜ預貯金の相続手続きが必要?「口座凍結」とは?

まず、なぜ預貯金の相続手続きが必要となるのか、その前提となる「口座凍結」について理解しておきましょう。

金融機関は、口座名義人である被相続人が亡くなった事実を知ると、原則としてその方の**預貯金口座を「凍結」**します。口座が凍結されると、その口座からの現金の引き出し、預け入れ、公共料金などの自動引き落とし、振込といった一切の取引ができなくなります。

なぜ金融機関は口座を凍結するのでしょうか? 主な理由は以下の2つです。

  1. 相続財産の保全: 被相続人の死亡後、相続人が確定し、遺産の分け方が決まるまでの間、一部の相続人が勝手に預金を引き出してしまうことを防ぎ、相続財産を安全に保護するためです。
  2. 相続人間のトラブル防止: 正当な権利者以外の人に誤って払い戻しをしてしまったり、遺産分割協議が成立する前に一部の相続人に払い戻したりすると、後々相続人間の紛争の原因となる可能性があります。金融機関は、このようなトラブルに巻き込まれることを避けるため、厳格な手続きを求めるのです。

したがって、凍結された口座から相続人が正当に預貯金を受け取るためには、金融機関が定める相続手続きを正確に行い、解約して払い戻しを受けるか、相続人の口座に名義を変更してもらう必要があるのです。

預貯金相続手続きの主な流れ(ステップ・バイ・ステップ)

金融機関や相続の状況によって多少の違いはありますが、預貯金の相続手続きは一般的に以下の流れで進みます。

ステップ1:金融機関への死亡連絡と残高証明書の請求

まず最初に行うべきことは、被相続人が口座を持っていたと思われる金融機関に、口座名義人が亡くなったことを連絡することです。 * 連絡事項: 被相続人の氏名、死亡年月日、口座番号(分かれば)、連絡者の氏名と連絡先などを伝えます。 * 今後の手続きの確認: この時、今後の相続手続きに必要な書類や手順について、金融機関の担当者から説明を受けましょう。 * 「残高証明書」の発行依頼: 遺産分割協議や相続税申告のために、相続開始日(被相続人の死亡日)時点の預金残高を証明する「残高証明書」の発行を依頼します。発行には数日から1週間程度かかることがあります。 * 「取引履歴(取引明細)」の請求も検討: 必要に応じて、過去の一定期間の取引履歴の開示を請求することもできます。これにより、生前の不自然な出金がないかなどを確認できます。

ステップ2:必要書類の収集

金融機関から案内された必要書類を収集します。金融機関ごとに独自の書式(相続手続依頼書など)を用意している場合がほとんどですが、戸籍謄本など共通して求められる書類も多数あります(詳細は後述)。

ステップ3:遺産分割協議の完了(または遺言書の確認)

凍結された預貯金を誰が、どのように相続するのかを確定させる必要があります。 * 遺言書がある場合: 遺言書の内容に従って、預貯金の取得者が決まります。 * 遺言書がない場合: 相続人全員で遺産分割協議を行い、預貯金の分け方について合意します。その合意内容を記した「遺産分割協議書」を作成します。

ステップ4:金融機関への書類提出と手続き依頼

収集した全ての必要書類と、金融機関所定の相続手続依頼書(相続届、払戻請求書など、金融機関によって名称が異なります)に必要事項を記入・押印し、金融機関の窓口に提出するか、郵送で送付します。

ステップ5:預貯金の払い戻しまたは名義変更の完了

提出した書類に不備がなければ、金融機関内で審査が行われ、通常1週間から2週間程度(金融機関や案件の複雑さによって異なります)で手続きが完了します。 * 払い戻しの場合: 相続人が指定した代表者の口座に、解約された預貯金が振り込まれます。 * 名義変更の場合: 被相続人の口座が、相続人の名義に書き換えられます(ただし、名義変更に対応していない金融機関や口座の種類もあります)。

金融機関での預貯金相続手続きに一般的に必要な主な書類

必要書類は、金融機関や相続のパターン(遺言の有無、相続人の構成など)によって異なりますので、必ず事前に手続きを行う金融機関に確認することが最も重要です。 ここでは、一般的に必要となる主な書類を挙げます。

① 被相続人(亡くなった方)に関する書類

  • 出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む): 被相続人の相続関係を確定するために不可欠です。複数の市区町村にまたがって収集する必要がある場合が多いです。
  • 住民票の除票(または戸籍の附票): 被相続人の最後の住所地や死亡の事実を確認するために必要です。

② 相続人全員に関する書類

  • 現在の戸籍謄本(または戸籍抄本): 相続人が現在生存していること、被相続人との続柄などを証明します。
  • 印鑑証明書: 金融機関所定の書類に押印する実印の証明として、発行から3ヶ月または6ヶ月以内のものを求められるのが一般的です。相続人全員分が必要となるケースが多いです。

③ 預貯金の分け方(相続方法)に応じた書類

  • 遺言書がある場合:
    • 遺言書(原本または写し): 公正証書遺言の場合はその謄本。自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所による「検認済証明書」が付された遺言書が必要となるのが一般的です(法務局の自筆証書遺言保管制度を利用している場合は、検認は不要で「遺言書情報証明書」を提出します)。
    • 遺言執行者がいる場合: 遺言執行者の選任審判書謄本(家庭裁判所で選任された場合)や、遺言書で指定されている場合はその旨が分かる部分、遺言執行者の印鑑証明書など。
  • 遺産分割協議による場合:
    • 遺産分割協議書(原本): 相続人全員が署名し、実印を押印したもの。これに相続人全員の印鑑証明書を添付します。
  • 法定相続分通りに分割する場合など、特定の様式がない場合:
    • 金融機関が用意する所定の「同意書」や「相続手続依頼書」に、相続人全員が署名・実印を押印し、印鑑証明書を添付する形で対応することが多いです。

④ 金融機関所定の書類

  • 相続手続依頼書(相続届、払戻請求書など): 金融機関ごとに独自の書式があります。窓口で受け取るか、ウェブサイトからダウンロードできる場合もあります。
  • 被相続人の預金通帳、証書、キャッシュカード、届出印など: これらを紛失している場合は、その旨を金融機関に申し出て、別途手続きが必要になることがあります。

⑤ その他、状況に応じて必要となる書類の例

  • 相続放棄をした相続人がいる場合: その相続人の「相続放棄申述受理証明書」(家庭裁判所発行)。
  • 相続人に未成年者がいる場合: 特別代理人の選任審判書謄本(家庭裁判所発行)。
  • 相続人に成年被後見人等がいる場合: 成年後見人等の登記事項証明書。

繰り返しになりますが、必要書類はケースバイケースです。二度手間を防ぐためにも、必ず事前に金融機関に詳細を確認しましょう。

預貯金相続手続きをスムーズに進めるためのポイントと注意点

煩雑に感じられる預貯金の相続手続きですが、以下のポイントを押さえることで、比較的スムーズに進めることができます。

  • ポイント1:早めの死亡連絡と残高確認を 被相続人の死亡後、できるだけ早く金融機関に連絡し、口座凍結の状況や今後の手続きについて確認しましょう。同時に残高証明書を取得することで、財産の全体像を把握する一助となります。
  • ポイント2:必要書類は事前にリストアップし、正確に準備する 金融機関の指示に従い、必要な書類をリスト化し、漏れや不備がないように丁寧に準備しましょう。特に戸籍謄本は、出生から死亡まで連続したものを集めるのに時間がかかる場合があります。
  • ポイント3:相続人全員の協力体制を築く 特に遺産分割協議が必要な場合や、金融機関所定の書類に相続人全員の署名・押印が必要な場合は、相続人同士が協力し合うことが不可欠です。事前に連絡を取り合い、スケジュールを調整しましょう。
  • ポイント4:複数の金融機関に口座がある場合は、同時並行で進める 多くの金融機関で同様の書類が必要となるため、戸籍謄本や印鑑証明書などを必要部数用意し、各金融機関への手続きを同時並行で進めると効率的です。
  • ポイント5:少額預貯金の場合の簡易手続きの確認 金融機関によっては、預金額が一定額以下の場合(例えば100万円以下など)には、必要書類を簡略化したり、代表相続人の手続きだけで済ませたりする簡易な取り扱いを設けていることがあります。該当するかどうか確認してみましょう。
  • ポイント6:「相続預金の払戻し制度(仮払い制度)」の活用も検討 2019年の民法改正により、遺産分割協議が成立する前であっても、相続人が単独で、一定額(金融機関ごとに上限があり、かつ「相続開始時の預金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分」、ただし一つの金融機関からは150万円まで)の預貯金の払い戻しを請求できる制度が創設されました。これは、当面の葬儀費用や被相続人の未払い医療費、相続人の生活費などに充てることを目的としたものです。利用には一定の条件や手続きが必要ですので、金融機関に相談してみましょう。

預貯金相続手続きにおける行政書士の役割とサポート

預貯金の相続手続きは、必要書類が多く、金融機関ごとに対応も異なるため、時間と手間がかかる作業です。特に、お仕事でお忙しい方や、遠方にお住まいの方、ご高齢の方にとっては、大きな負担となり得ます。

私たち行政書士は、相続手続きの専門家として、みなさまのこのようなご負担を軽減し、預貯金の相続手続きが円滑に進むよう、きめ細やかなサポートをご提供いたします。

金融機関との煩雑なやり取りや書類作成は、いわば「相続という旅の荷物」。私たちは、その重い荷物をみなさまに代わって整理し、目的地まで安全にお届けするお手伝いをします。

  1. 金融機関への死亡連絡代行と必要書類の確認・手配:

    • みなさまに代わって金融機関に連絡を取り、必要な手続きや書類について正確に確認し、リストアップします。残高証明書や取引履歴の請求代行も可能です。
  2. 相続関係書類(戸籍謄本等)の収集代行:

    • 相続手続きに不可欠な、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本などを、行政書士の職務上請求権限を用いて、迅速かつ確実に収集いたします。
  3. 遺産分割協議書の作成支援:

    • 預貯金の分け方について相続人間で合意が形成された場合、その内容を法的に有効な遺産分割協議書として作成するサポートをいたします。
  4. 金融機関所定の相続手続依頼書等の作成サポート:

    • 金融機関ごとに異なる複雑な相続手続依頼書や払戻請求書などの作成をお手伝いし、記入漏れやミスを防ぎます。
  5. 手続き全体の進行管理とアドバイス:

    • 複数の金融機関に口座がある場合でも、それぞれの進捗状況を管理し、手続き全体がスムーズに進むようサポートします。
  6. お忙しい相続人の代理人としての活動(一部):

    • 書類の提出や受け取りなど、金融機関の窓口での手続きについて、委任状に基づき可能な範囲で代理・代行することも検討できます(金融機関の規定によります)。

行政書士に依頼することで、みなさまは煩雑な手続きから解放され、時間的・精神的な負担を大幅に軽減することができます。また、専門家が関与することで、書類の不備による手続きの遅延を防ぎ、より迅速かつ確実な解決が期待できます。

まとめ:預貯金手続きは正確・迅速に。専門家の活用も賢い選択。

今回の「相続セミナー」では、多くの方が直面する「預貯金の相続手続き」について、その流れ、必要書類、そしてスムーズに進めるためのポイントを詳しく解説してまいりました。

故人が遺してくれた大切な預貯金を、相続人が確実に受け取るためには、金融機関が定める手続きを正確に、そしてできる限り迅速に行うことが重要です。 そのためには、事前の情報収集と計画的な書類準備、そして相続人全員の協力が不可欠となります。

金融機関ごとに手続きの細部が異なる場合もあるため、まずは取引先の金融機関に問い合わせて、正しい情報を得ることが第一歩です。そして、もしご自身での手続きに不安を感じたり、時間的な余裕がなかったりする場合には、私たち行政書士のような専門家のサポートを積極的に活用することも、賢明な選択肢の一つと言えるでしょう。

次回の「相続・遺言・家族信託お役立ちブログ」第38回相続セミナーでは、「不動産の相続手続き(相続登記) ~義務化と申請方法~」というテーマでお届けします。相続財産の中でも特に重要な不動産について、その名義変更手続きである「相続登記」が2024年4月から義務化されたことを踏まえ、その具体的な申請方法や注意点などを詳しく解説する予定です。どうぞご期待ください。

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