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相続セミナー38回 :不動産の相続手続き(相続登記) ~義務化と申請方法~

みなさん、こんにちは。「相続・遺言・家族信託お役立ちブログ」へお越しいただき、ありがとうございます。このブログでは、相続、遺言、そして民事信託(家族信託)に関する情報を、専門家である行政書士の視点から、分かりやすく、そして実践的な情報をお届けしています。

前回の第37回相続セミナーでは、「預貯金の相続手続き」と題し、金融機関での具体的な手続きの流れや必要書類について詳しく解説いたしました。故人の大切な預貯金を円滑に受け取るための一助となれば幸いです。

さて、相続財産の中でも、特にその価値が大きく、かつ私たちの生活に深く関わるものとして「不動産」(土地や建物)が挙げられます。この不動産を相続した場合に必要となるのが、「相続登記(そうぞくとうき)」という手続きです。これは、亡くなった方(被相続人)の名義になっている不動産を、相続人の名義に変更する法務局での手続きを指します。

これまで、この相続登記は必ずしも義務ではありませんでしたが、社会問題化している所有者不明土地の発生を予防する観点から、2024年(令和6年)4月1日より、相続登記の申請が義務化されました。 この法改正は、不動産を相続する全ての方にとって非常に重要な変更点となります。

そこで今回の第38回では、「不動産の相続手続き(相続登記) ~義務化と申請方法~」というテーマで、相続登記とは何か、なぜ重要なのか、そして何よりもこの新たな「義務化」の内容と、具体的な申請方法の基本について、詳しくご説明してまいります。

この記事を最後までお読みいただければ、相続登記の必要性、義務化に伴う注意点、そしてご自身が不動産を相続した際に何をすべきか、その基本的な知識と道筋をご理解いただけるはずです。

相続登記とは何か? なぜこれほどまでに重要なのか?

まず、「相続登記」とは何か、そしてなぜこの手続きが重要なのかについて、基本的なところから確認しましょう。

相続登記とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた土地や建物などの不動産について、その登記名義を、遺言や遺産分割協議の結果に基づいて、正当な相続人の名義に変更する手続きのことです。この手続きは、不動産の所在地を管轄する法務局に申請して行います。

相続登記を行うことには、以下のような重要な意味があります。

  1. ご自身の権利を法的に確定させ、第三者に対抗できるようにするため(対抗力の具備): 相続登記をして不動産の名義を自分に変更しておくことで、その不動産の所有者が自分であることを、法務局の登記簿という公的な記録によって公示し、他の誰に対しても正当な所有者として主張(対抗)できるようになります。
  2. 不動産の売却や担保提供(融資)の前提となるため: 将来、その不動産を売却したいと考えたり、あるいはその不動産を担保にして金融機関から融資を受けたいと考えたりする場合、原則として相続登記が完了し、ご自身の名義になっていなければ、これらの取引を行うことができません。
  3. 将来のさらなる相続トラブルを防止するため: 相続登記をしないまま長期間放置してしまうと、その間に相続人がさらに亡くなって新たな相続が発生し(数次相続)、ネズミ算式に関係者が増えて権利関係が非常に複雑になってしまうことがあります。そうなると、いざ登記をしようとしても、必要書類の収集が困難になったり、相続人間での合意形成が難しくなったりして、手続きが極めて困難になるか、最悪の場合、紛争に発展する可能性があります。
  4. 空き家問題や所有者不明土地問題の解決に貢献するため: 相続登記が適切に行われないことが、適切な管理がされない空き家や、所有者が誰だか分からなくなってしまった土地が増える一因となっていました。相続登記を確実に行うことは、これらの社会問題の解決にも繋がります。

これまでは任意であった相続登記ですが、その重要性に鑑み、ついに法的な義務となりました。

【最重要ポイント】2024年4月1日施行!相続登記の義務化とは?

今回のセミナーで最もお伝えしたいのが、この「相続登記の義務化」についてです。

所有者不明土地問題の解決・発生予防を主な目的として、不動産登記法が改正され、2024年(令和6年)4月1日から相続登記の申請が義務化されました。

その主な内容は以下の通りです。

  • 義務の内容:

    • 相続(遺贈も含む)により不動産の所有権を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日(通常は被相続人の死亡を知り、自分が相続人であることを知った日)から3年以内に、相続登記の申請をしなければならない。
    • 遺産分割協議が成立したことによって不動産を取得した相続人は、その遺産分割協議の成立日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記の申請をしなければならない。
  • 正当な理由なき申請漏れには過料の可能性: 上記の申請義務に違反し、正当な理由がないにもかかわらず申請を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。「正当な理由」としては、例えば、相続人が極めて多数で戸籍等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合、遺言の有効性や遺産の範囲について争いがある場合、申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある場合などが想定されていますが、個別の判断となります。

  • 過去の相続にも適用されます(遡及適用): この義務化は、施行日である2024年4月1日より前に発生した相続についても適用されます。 ただし、過去の相続については、施行日から3年間(つまり2027年3月31日まで)の猶予期間が設けられています。この期間内に相続登記を行う必要があります。心当たりのある方は、早急に対応を検討しましょう。

  • 「相続人申告登記」制度の新設: 上記の3年以内の相続登記が様々な事情で難しい場合に備えて、相続人が法務局に対し「私がこの不動産の相続人です」と申し出ることで、相続登記の申請義務を一旦履行したとみなされる「相続人申告登記」という新たな制度も創設されました。これは、戸籍謄本など一定の書類を提出するだけで行える比較的簡易な手続きですが、あくまで「申告」であり、権利関係を確定させる正式な「相続登記」ではありません。 そのため、不動産を売却したり担保に入れたりする際には、別途正式な相続登記が必要になります。また、相続人申告登記をした後、遺産分割協議が成立した場合には、やはりその日から3年以内にその内容に基づいた登記申請が必要となります。

この義務化は、不動産をお持ちだった方が亡くなられた場合、相続人にとって非常に大きな影響があります。これまで「いつかやろう」と思っていた方も、期限を意識して対応する必要が出てきました。

相続登記の申請手続きの流れと主な方法

相続登記の申請は、一般的に以下の流れで進められます。

  1. 必要書類の収集: まず、相続登記の申請に必要となる各種書類を収集します(詳細は後述)。戸籍謄本や遺産分割協議書、固定資産評価証明書などがこれにあたります。
  2. 登記申請書の作成: 法務局に提出する「登記申請書」を作成します。申請書の様式や記載例は、法務局のウェブサイトで入手できます。不動産の表示(所在地、地番、家屋番号など)、登記の原因(「相続」や「遺産分割」など)、相続人の情報などを正確に記載する必要があります。
  3. 登録免許税の納付: 相続登記には、「登録免許税」という税金がかかります。税額は、原則として**不動産の固定資産税評価額の0.4%**です(一部例外あり)。計算した税額分の収入印紙を購入し、登記申請書に貼付して納付します。
  4. 法務局への申請: 作成した登記申請書と収集した必要書類一式を、その不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。申請方法は以下のいずれかです。
    • 窓口申請: 法務局の窓口に直接持参して申請します。
    • 郵送申請: 書類一式を法務局に郵送して申請します(書留郵便推奨)。
    • オンライン申請: 一定の条件(マイナンバーカード、専用ソフトの準備など)を満たせば、インターネット経由でのオンライン申請も可能です。
  5. 登記識別情報通知書(いわゆる権利証)の受領: 法務局での審査(通常1週間~2週間程度、混雑状況により変動)が完了し、登記が無事に終わると、新たに登記名義人となった相続人に対し、「登記識別情報通知書」が発行されます。これは、かつての「権利証」に代わるもので、不動産の権利を証明する非常に重要な書類ですので、大切に保管しましょう。

相続登記に一般的に必要となる主な書類

相続登記に必要な書類は、遺言の有無や遺産分割協議の有無など、相続の具体的な状況によって異なります。必ず事前に法務局や専門家にご確認ください。ここでは、一般的に必要となる主な書類を挙げます。

① 被相続人(亡くなった方)に関する書類

  • 出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本: 相続関係を確定するために不可欠です。
  • 住民票の除票(または戸籍の附票): 登記簿上の被相続人の住所と、戸籍上の最後の住所が異なる場合などに、その繋がりを証明するために必要です。

② 相続人全員に関する書類

  • 現在の戸籍謄本(または戸籍抄本): 相続人が現在生存していること、被相続人との続柄などを証明します。
  • (不動産を取得する相続人の)住民票: 新たに登記名義人となる相続人の住所を証明するために必要です。

③ 登記の原因(どのように不動産を取得したか)に応じた書類

  • 法定相続分で登記する場合: 上記①②の書類のみで申請できる場合もあります(ただし、相続人全員の協力が必要となるケースが多いです)。
  • 遺言書に基づいて登記する場合:
    • 遺言書: 公正証書遺言の場合はその謄本。自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の「検認済証明書」が付されたもの、または法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した場合は「遺言書情報証明書」。
  • 遺産分割協議に基づいて登記する場合:
    • 遺産分割協議書: 相続人全員が署名し、実印を押印したもの。
    • 相続人全員の印鑑証明書: 遺産分割協議書に押印した実印の証明として必要です(通常、発行から3ヶ月以内のもの)。

④ 不動産に関する書類

  • 固定資産評価証明書: 登記申請を行う年度のものが必要です。登録免許税の計算の基礎となります。市区町村役場(都税事務所など)で取得します。

⑤ その他、状況に応じて必要となる書類の例

  • 相続放棄をした相続人がいる場合: その相続人の「相続放棄申述受理証明書」(家庭裁判所発行)。
  • 委任状: 司法書士などの専門家に登記申請を依頼する場合に必要です。

これらの書類を正確に、かつ漏れなく収集することが、スムーズな登記申請の鍵となります。

相続登記をスムーズに進めるためのポイントと注意点

相続登記の義務化に伴い、これまで以上に迅速かつ正確な対応が求められます。

  • 義務化を強く意識し、早期に着手する: 「3年以内」という期限はありますが、戸籍収集や遺産分割協議に時間がかかることもあります。相続が発生したら、できるだけ早めに相続登記の準備に取り掛かりましょう。
  • 必要書類は正確かつ網羅的に収集する: 特に戸籍謄本は、出生から死亡まで一つでも欠けていると手続きが進みません。
  • 不動産の表示を正確に把握する: 登記事項証明書(登記簿謄本)や固定資産評価証明書で、不動産の所在地、地番、家屋番号などを正確に確認し、申請書に記載します。
  • 登録免許税の計算と納付準備を忘れずに。
  • 専門家(司法書士)への相談・依頼を積極的に検討する: 相続登記の申請代理は司法書士の独占業務です。書類の作成や手続きが複雑で難しいと感じた場合は、無理をせず、早い段階で司法書士に相談することをお勧めします。

相続登記における行政書士と司法書士の役割分担と連携

相続登記の手続きにおいて、行政書士と司法書士はそれぞれ異なる専門分野でみなさまをサポートします。

  • 行政書士の役割:

    • 相続人調査(戸籍収集): 相続登記の前提となる、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本などの収集を、職務上請求権限を用いて代行します。
    • 遺産分割協議書の作成支援: 相続登記の原因となる遺産分割協議について、その内容を法的に有効な遺産分割協議書として作成するサポートを行います。
    • 登記申請に必要な前提書類の収集・作成サポート: 住民票、固定資産評価証明書など、登記申請に必要な各種書類の収集をお手伝いしたり、書類作成のアドバイスを行ったりします。
    • 信頼できる司法書士への橋渡し: 相続登記の申請代理は司法書士の業務となるため、みなさまのご状況に合わせて、信頼できる司法書士をご紹介し、スムーズな連携が図れるようサポートします。
  • 司法書士の役割:

    • 相続登記申請書の作成: 専門知識に基づき、法的に正確な登記申請書を作成します。
    • 法務局への登記申請代理: みなさまに代わって、法務局への登記申請手続きを代理して行います。
    • 登記に関する専門的な法務相談: 複雑な権利関係が絡む場合や、登記に関する専門的な法律判断が必要な場合に、的確なアドバイスを行います。

円滑な相続登記の実現のためには、このように行政書士と司法書士がそれぞれの専門性を活かし、緊密に連携を取ることが非常に重要です。

まとめ:相続登記は新たな義務。専門家と連携し、確実に履行を。

今回の「相続セミナー」では、不動産の相続手続きである「相続登記」について、その重要性、2024年4月から義務化された内容、そして具体的な申請方法の基本を詳しく解説してまいりました。

相続登記は、もはや「いつかやればいい」手続きではなく、法的に定められた「義務」となりました。 この義務を怠ると、過料の対象となる可能性があるだけでなく、将来的に不動産の売却や活用が困難になったり、権利関係が複雑化してご家族に大きな負担をかけたりするリスクがあります。

ご自身で手続きを進めることも可能ですが、必要書類の収集や申請書の作成は専門的な知識を要し、時間も手間もかかります。特に相続登記の義務化に伴い、期限内に正確な手続きを行うことの重要性はますます高まっています。

「何から手をつければいいか分からない」「忙しくて手続きを進める時間がない」「過去の相続で未登記の不動産がある」 もし、そのようなお悩みやご不安をお持ちでしたら、まずは私たち行政書士にご相談ください。私たちは、相続人調査や遺産分割協議書作成といった準備段階でのサポートを通じて、その後の司法書士によるスムーズな登記申請へと繋げ、みなさまの不動産承継が確実かつ安心して行われるよう、全力でお手伝いさせていただきます。早期の相談と対応が、未来の安心を守る鍵です。

次回の「相続・遺言・家族信託お役立ちブログ」第39回相続セミナーでは、「株式・投資信託の相続手続き ~証券会社での流れ~」というテーマでお届けします。不動産と並んで主要な相続財産となり得る有価証券について、相続が発生した場合に証券会社で行う具体的な手続きや、必要となる書類、注意点などを詳しく解説する予定です。どうぞご期待ください。

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